衆院選 争点でみる党首討論 躍る「脱原発」に自民など異議

産経新聞 12月1日(土)7時55分配信


衆院選 争点でみる党首討論 躍る「脱原発」に自民など異議
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党首討論会に参加した政党の立ち位置(写真:産経新聞)

 ■TPP回答求め、民主“自爆”

 衆院選に向けて日本記者クラブが開いた党首討論会では、出席した11党首のうち6人が冒頭発言で原子力政策に触れ、最も活発に議論が交わされた。「脱原発」「卒原発」などの言葉が躍る中で、自民党の安倍晋三総裁と日本維新の会の石原慎太郎代表はこうした風潮に異を唱えた。野田佳彦首相(民主党代表)は安倍氏に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する見解をただし、争点化を図った。(加納宏幸)

【表で見る】 衆院選の主な争点に対する各党の姿勢

 ≪原発≫

 全原発を廃炉とする「卒原発」を掲げて結成された新党「日本未来の党」の嘉田由紀子代表から自民党政権の原子力政策の責任を問われると、安倍氏はすぐさま反論した。

 「安全神話に寄りかかってきたのは反省しなければならない。一方、中国が原子力発電を続ける中で日本だけが止め、事故が起こったときに大丈夫なのか」

 石原氏も原発廃止論を批判したが、他党からの主張は、「脱原発」のオンパレードとなった。

 首相「2030年代に原発依存ゼロを目指す」

 嘉田氏「大地を汚し故郷を奪う原発から10年後までの卒業を目指す」

 原発ゼロを実現する時期に違いはあるが、民主、未来など冒頭発言でアピールした6党と、マニフェスト(政権公約)で「1年でも早く原発ゼロを」と主張している公明党の計7党が、衆院選に向けて脱原発の方向性を打ち出している。

 ≪TPP≫

 「アクセルを踏むのかブレーキを踏むのかがよく分からない。TPPを進めるか、明確に答えてほしい」

 首相は安倍氏をこう挑発した。安倍氏は「聖域なき関税撤廃は関税自主権を手放せと言っているようなもの。民主党政権で日米同盟関係の信頼がずたずたにされ、事前調整ができなかった」と慎重論を唱えた。

 争点化を図った首相だが、民主党マニフェストはTPPを「日中韓自由貿易協定(FTA)、東アジア包括的経済連携(RCEP)と同時並行的に進め、政府が判断する」との表現にとどめている。党内の慎重論に配慮したものだが、「アクセルを踏むのか…」という問いかけは、ブーメランのように首相自身に跳ね返ってくる。この他、みんなの党が参加を訴え、共産党、社民党、新党大地が反対を表明した。

 ≪尖閣国有化≫

 外交問題では沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中関係が主要な争点となった。

 「漁民を救うため、最低のインフラとして灯台と船だまりを造ってもらいたい。国土を守り、日本をチベットにしないために」

 東京都知事として尖閣諸島を購入しようとした石原氏は安倍氏に求めた。これに対し、安倍氏は船だまりの建設と、島を守るための公務員の常駐を検討することを約束した。

 尖閣諸島を国有化した首相は「中国が感情的に反発している。公務員の常駐を今、議論することがどういう影響を及ぼすか聞きたい」とただしたが、安倍氏は「民主党政権の外交敗北で中国は尖閣にチャレンジしている」と反論した。

 ≪景気対策≫

 公明党の山口那津男代表は首相に、補正予算の編成による10兆円規模の緊急経済対策を求めた。首相は「本格的な補正予算が必要だ。ぜひ知恵を借りたい」と、同党に秋波を送った。

 首相は討論で、経済環境の急変時に増税を見合わせる消費税増税法の「景気条項」を挙げ、「切れ目のない経済対策をしっかりと講じ、消費税の引き上げができるような環境整備に全力を尽くす」と述べた。